Shigeru Nishikawa

Copyright(c) Shigeru Nishikawa

Sealed House 121-New National Stadium 2- 970×1940mm oil, graphite, metal powder on canvas, panel 2020

始まり

そもそもSealedhouse のシリーズの始まりの始まりは、風景の中に佇む建築中の保護シートで覆われた住宅を描き、周りの風景にノイズを描く所から始まりました。

その作品を描いてから丸2年位迷い、悩み、発表自体からも意識的に遠ざかりました。こんな状態で作品を見せると、曖昧なまま色々とごまかして進んでしまうと思ったからです。そうするともう、迷う、悩むどころか戻れなくなってしまう。

2年の間何をしたかというと、一言でいうと整理整頓です。何をどう描くのか。自分が何を描きたいのか。何故それを描きたいのか。どう描いたらそれを伝える事が出来るのか。自分が得意とする描き方はどんな描き方か。などなど。

様々なアプローチを通して整理を終えた当初、各タブローの背景には主題となる建物の周囲の風景をまず描き、その後その風景をあえて白く塗りつぶした上に、シートで覆われた建物を描いていました。コンセプトは、建物の更新が同時にその場所や風景を、一度更地(白紙)に戻すことでした。そこから均一な単色の背景へと変遷していきます。

しかしこの新国立競技場に関しては、ザハ・ハディドのアイデア自体は想像上の、実現する事のなかった建物ですが、ある意味現実にある建物よりも記憶に残るデザインであり、かつストーリーであったように思います。その為、ザハのアイデアを描き、それを白紙にする事なく、その上に建設中の新国立競技場を描こうと思いました。

白紙

この春のメインの作品は、2020年東京オリンピックの舞台となる新国立競技場の建設途上を描いた作品の予定です。

なぜならザハ・ハディドの案が白紙になったうえに立つ新国立競技場の在り方は、Sealed House というシリーズにおいて、描かなければならないモチーフと僕の目に映ったからです。

2020年、オリンピックの始まる前に発表する為、2017年の夏から取材を始めていました。暑い夏の太陽の下、汗だくになって現場の周囲を撮影して歩いたり、近くに聳えるホテルの上階にしれっと入れないかと試みたりもしました。ある時はOUT of PLACEの鈴木さんの教え子が働くオフィスが入っているビルの屋上に上がらせてもらい、建設現場を撮影したり。

この時はテンションが上がったな~。

そういえばこの時期のハトバスツアーには、こうしたオリンピックに向けて建設中の大規模施設の工事現場を回るツアーという、なかなか鉄骨な?ツアーもあったんです。その中にも新国立競技場は組み込まれていました。

どんな人がこのツアーに参加したのか、、、、そんな方には是非僕の展示を見て貰いたいものです。

そうして東京に行く度に何度も通いアイデアを重ねてきました。

まさかの中止

今年の発表も一昨年、去年と同様にOUT of PLACEより3月のアートフェア東京から始まる予定だったけれど、まさかの新型コロナウイルス。早々にアートバーゼル香港は異例の中止を発表。2月末、アートフェア東京と同時期に開催であったアートin パークハイアット東京は9月延期が決まり、政府の要請を受けて各地の美術館の展示も延期や中止へと追い込まれていった。そんな中、3月に入っても開催する姿勢をみせていたアートフェア東京も遂に3月4日、中止が決定。

中止が決まったその日、偶然にも同じくフェアに出品予定であった作家仲間たちと飲みに行っていた。

焼肉からの王将。

制作は孤独な仕事で、その成果の発表が中止になったこと自体は無念だったけれど、このタイミングでこうやって飲み、語り合えたことはこれからの事を考える機会となり、僕には良い時間だった。

フェアの開催は中止になったけれど、その後に個展が控えていた為、気持ちをそちらに切り替えていこうと思っていたけど・・・・