そもそもSealedhouse のシリーズの始まりの始まりは、風景の中に佇む建築中の保護シートで覆われた住宅を描き、周りの風景にノイズを描く所から始まりました。
その作品を描いてから丸2年位迷い、悩み、発表自体からも意識的に遠ざかりました。こんな状態で作品を見せると、曖昧なまま色々とごまかして進んでしまうと思ったからです。そうするともう、迷う、悩むどころか戻れなくなってしまう。
2年の間何をしたかというと、一言でいうと整理整頓です。何をどう描くのか。自分が何を描きたいのか。何故それを描きたいのか。どう描いたらそれを伝える事が出来るのか。自分が得意とする描き方はどんな描き方か。などなど。
様々なアプローチを通して整理を終えた当初、各タブローの背景には主題となる建物の周囲の風景をまず描き、その後その風景をあえて白く塗りつぶした上に、シートで覆われた建物を描いていました。コンセプトは、建物の更新が同時にその場所や風景を、一度更地(白紙)に戻すことでした。そこから均一な単色の背景へと変遷していきます。
しかしこの新国立競技場に関しては、ザハ・ハディドのアイデア自体は想像上の、実現する事のなかった建物ですが、ある意味現実にある建物よりも記憶に残るデザインであり、かつストーリーであったように思います。その為、ザハのアイデアを描き、それを白紙にする事なく、その上に建設中の新国立競技場を描こうと思いました。