今回の個展の作品について少しずつお話したいと思います。
メインの新国立競技場の事は個展のテキストに記しているので、それ以外の作品に関して。
基本的には自分で撮影した写真、つまり、当地(建設、解体現場)を訪れて撮影した写真が元となっている。が、全ての場所に行けるわけでもなく、また、様々な場所、時間でこうした建設と解体は絶え間無く行なわれているので、多くの方から情報をいただいたりもする。
お台場にある自由の女神が補修の為に覆われていると、作家の宮原野乃実さんから連絡があり、写真を送ってもらった。宮島の大鳥居はギャラリーアウトオブプレイスの野村さんから、写真家の多田ユウコさんが撮影した写真を見せて貰い、許可を得て使用させて頂いた。
自由が封印される。
聖域が封印される。
世界が今、直面しているこの状況下にピタリと当てはまるモチーフであり、それは新国立競技場の時にも感じた事だが、2020年がこのコロナ禍による未曾有の事態として記録、記憶されていき、その記憶はいつかは忘れられていく中で、描くべき、今残すべき対象ではないかと感じた。
然るべき時を得て、その自由も聖域も封印が解かれるであろうが、それはかつての自由や聖域と同じなのだろうかと、絵の具を載せながら問うていた。
僕はより良い未来を見ながら現実を描いていくのだと思う。